2014/08/04

【研究紹介4】無意識や直感が嘘を見抜く能力を向上させる研究いくつか

3つの研究紹介です。

Togetterによる簡単な研究紹介はこちら

1.無意識的に嘘を見抜くことを示す証拠
Abstract(ざっくり和訳)
 生存や繁殖の成功を最大化するために、霊長類は嘘をつく傾向と嘘を正確に見抜く能力を進化させてきた。嘘を正確に見抜くことに明らかに利点があるにもかかわらず、意識的に嘘を見抜く確率は偶然よりも少しだけ正確なこと(54%前後)が報告されている。しかしながら、犯罪心理学、神経科学や霊長類学の知見において、嘘を見抜くときに無意識的な心のプロセスが用いられた場合には正確性が向上することが示唆されている。本研究では、他者が嘘をつく行動を見た人は、嘘に関連した認知的概念が自動的に活性化し、他者が真実を話す行動を見た人は、真実に関連した認知的概念が自動的に活性化することを仮定した2つの研究を行った。その結果、直接的な指標で嘘を判断させるよりも、間接的な指標で嘘を判断させたときに正確に嘘を見抜いていたことが示された。今回の結果は、人間の嘘を見抜く能力を再考し、新しいアプローチの仕方を提案するものと言える。

●文献情報
Brinke, L., Stimson, D., & Corney, D. R. (2014). Some evidence for unconscious lie detection. Psychological Science, 25(5), pp.1098-1105.


2.無意識的な心のプロセスは嘘を見抜く能力を向上させる
Abstract(ざっくり和訳)
 嘘つきを見抜く能力は社会関係のバランスを維持するために不可欠なものであるが、人間は嘘を見抜くことが一般的に苦手である。実際に、非常に多くの先行研究は、真実と嘘を区別するときの確率は偶然よりも少しだけ正確なこと(54%前後)が報告されている。しかし、本研究で実施した5つの実験の結果から、一定時間の無意識的な処理を行った後には嘘を見抜く能力が非常に高まることが示された。特に、意識的に熟考し続けた人は、意識的に考えるように仕向けられた人や即座に判断を求められた人よりも、嘘を見抜く能力が低下していた。また、無意識的な心のプロセスを経た後の嘘を見抜く確率は偶然よりも高かった。本研究において無意識的な心のプロセスを経ると嘘を見抜く能力が向上するのは、無意識的な心のプロセスを通して嘘を正確に見抜くために必要な特定の情報を統合させることが可能になるためであることが示された。人間の心理は真実と嘘を意識的に区別することには適していないが、これまでの研究で見落とされてきた無意識的な心のプロセスに嘘を見抜く能力が存在することが示唆された。

●文献情報
Reinhard, M.A., Greifeneder, R., & Scharmach, M. (2013). Unconcious processes improve lie detection. Journal of Personality and Social Psychology, 105(5), pp.721-739. (abstractのみ)


3.直感は嘘を見抜く能力を改善できるか?
Abstract(ざっくり和訳)
 嘘を見抜く課題中の処理スタイル(直感処理・熟考処理)の役割を検討するために2つの実験を行った。実験1では、従来の嘘を見抜く方法として採用されてきた熟考処理と比較して直感処理に基づく判断は嘘を見抜く能力を向上させることが示された。実験2では、嘘を判断するときに言語的な合理性を考えるように指示された参加者と何も指示されていない参加者(統制条件)と比較して、嘘を判断するときに別の課題を行った参加者は嘘を見抜く能力が向上していた。本研究の結果から、直感処理が嘘を見抜く能力を向上させることが示唆された。

●文献情報
Albrechtsen, J. S., Meissner, C. A., & Susa, K. J. (2009). Can intuition improve deception detection performance? Journal of Experimental Social Psychology, 45(4) pp.1052-1055.