2015/05/22

2015年度 日本感情心理学会の嘘や欺瞞に関連する(かも)研究のタイトル・リスト

2015年6月13日から14日にかけて第23回日本感情心理学会が開催されます。こちらの学会発表で嘘や欺瞞に関連する(かも)研究のタイトル・リストを作成いたしました。詳細情報はHPをご確認ください。

情報を削除して欲しい場合にはdeception.research.team[at]gmail.com(@に要変換)、またはTwitterアカウント(D_research_team)までご連絡ください。すぐに削除いたします。


嘘や欺瞞に関連する研究


ポスター発表(6月14日 9時30分~10時30分)

  • 相手との将来を見据えて嘘をつく―対人葛藤状況と関係性が利他的な嘘の利益とコストの想定に与える影響―

嘘や欺瞞に関連するかも研究

ポスター発表(6月13日 9時30分~10時30分)


  • 高齢者の信頼性判断は外見の影響を受け続ける


口頭発表(6月13日 13時00分~15時00分)

  • なぜ不公正者の不幸を喜んでしまうのか:サンクション行動傾向とシャーデンフロイデの関連

2015/05/21

【研究紹介37】ヒバリ(朝型)とフクロウ(夜型)の道徳性:非道徳的行動は時刻と同様にクロノタイプに依存する(Psychological Sciences, 2014)

Kouchaki and Smith (2014) の論文に対するコメント論文なのでAbstractはありません。

●文献情報
Gunia, B. C., Barnes, C. M., & Sah, S. (in press). The morality of larks and owls: Unethical behavior depends on chronotype as well as time of day. Psychological Science

以下、ざっくり研究紹介。

  • 研究紹介20のKouchaki and Smith (2014) の論文に対するコメント論文です。こちらの論文では朝は道徳的な行動を取りやすい効果(Morning morality effect)を実証した研究です。詳しい内容は研究紹介20をご覧ください。この効果は自己制御資源が有限であり、生活しているだけでこの資源を消費していくため、朝よりも夜に資源が枯渇した結果、道徳的でない行動をとってしまうといったものでした。


  • この論文に対して、著者たちは時刻だけでなく、クロノタイプも道徳性に影響しているはずだといった仮説を立て、同じパラダイムで研究をしています。クロノタイプは、朝型や夜型といったように人の生活サイクルがどちらにシフトしているかを示すものです。中間型もあるみたいです。クロノタイプを測定する尺度があります(短縮版もあり)。






  • 著者達の仮説としては、朝型の人にはMornig morality effectが生じるが、夜型の人にはEvening morality effectが生じるはずといったものです。実験を2つ行っていますが、どちらもこの仮説にそった結果が得られていました。
  • ということで、著者たちはクロノタイプによる道徳効果(Chronotype morality effect)を提唱しています。これはMorning morality effectを否定するものではなく、この効果をさらに拡張したものと言えます。
  • 前回の研究紹介では、「誠実な人から本当のことを言ってもらいたいときは、午後よりも午前中に話を聞くのが良いと考えられます」とまとめていましたが、今回の研究から「本当のことを言ってもらいたいときは、その人のクロノタイプに合わせて、話を聞く時間を調整した方が良い」に変更させていただきます。


2015/05/18

【研究紹介36】ハンドボールにおけるフェイントなしとフェイントありの7 mスローのゴールキーパーの方向予測に知覚的訓練が与える影響(Journal of Sports Sciences, 2015)

Abstract(ざっくり和訳)
本研究では、フェイントなしとフェイントありの7 mスローのボールの方向をゴールキーパーが予測するときの生成期に知覚的訓練が与える影響について検討した。熟練したゴールキーパーは事前テストの成績に基づいて能力が均一になるように3群に振り分けられた。知覚訓練群(14人)は映像に基づく知覚訓練を受け、プラセボ訓練群(14人)は映像に基づく通常の訓練を受け、統制群は訓練を受けなかった。プラセボ訓練群と統制群と比較して知覚訓練群は、有意に成績が向上した。ただし、フェイントありの7 mスローの予測の成績は、フェイントなしの予測の成績よりも向上しなかった。したがって、ハンドボールのゴールキーパーにとってフェイントありの7 mスローの予測は困難な課題であるが、課題に特化した知覚訓練により成績が向上することが示された。

●文献情報
Alshariji, K. E., & Wade, M. G. (in press). Perceptual training effects on anticipation of direct and deceptive 7-m throws in handball. Journal of Sports Sciences.

以下、ざっくり内容紹介。

  • 今回の研究紹介は少し毛色が違う内容です。ハンドボールのゴールキーパーの7 mスローを止める成績を向上させるための知覚的訓練に関する研究です。おもしろいのはフェイントありの場合とフェイントなしの場合の訓練を分けて検討しているところでした。
  • さて、ハンドボールはマイナーな競技ですので、ルールなんて知らない人が多いことでしょう。。。簡単にイメージするにはバスケットボールとサッカーを足して2で割ると、ハンドボールになるかと思います(暴論)。空中の格闘技と呼ばれることもあり、身体接触が多くかなり激しいスポーツです。その一方で、高い戦略性も求められる奥深い競技です。
  • 細かい内容は置いておいて、ハンドボールには7 mスローといったサッカーで言うPKみたいなものがあります。これはシュートを打つ人とゴールキーパーの一騎打ちです。たぶん映像をみた方が分かりやすいと思いますので、こちらの映像をご覧ください。Youtubeからひっぱってきました。トッププレイヤーによるフェイントありのシュートです。


  • 先行研究からシュートを打つ人のフェイントに惑わされずに正確な方向を予測できれば、7 mスローを止める確率が高まることが報告されています。今回の研究では、この予測を向上させるために知覚的訓練を行うものでした。参加者はクエートのプロとユースチームに所属するゴールキーパーです。アジアではクエートや韓国でハンドボールが盛んです。
  • 実験は、訓練条件(知覚的訓練群・プラセボ訓練群・統制群)を参加者間要因、テスト時期(訓練前・訓練後)とシュート条件(フェイントなし・フェイントあり)を参加者内要因とする3要因計画で実施されています。
  • 知覚的訓練は録画映像を使用していました。プロとユースに所属する人に模擬的な7 mスローを行ってもらい、その映像から訓練用映像56個と試験用映像56個を作成してあります。それぞれフェイントなし28個、フェイントあり28個ずつでした。訓練用の映像は3部構成になっており、(i)ボールが手を離れる33 m秒前までの全身を再生、(ii)ボールが手を離れる前までの上半身のみを通常より25%遅い時間で再生、(iii)シュートを打ち終わるまでの全身(視線手がかりもあり)を再生していました。これらの映像は全てiPadで再生しており、参加者は練習の空き時間などにこの映像を1日に2回見るように教示されていました。
  • ボールが手を離れる33 m秒前に設定されていたのは、先行研究で成績の良いハンドボールのゴールキーパーがこの時間で意思決定をしていたことが報告されているからです(学会発表の内容です。リンクみつからず。。。)。
  • プラセボ訓練は通常の7mスローの映像を見てもらっていました。統制群は何もなしです。
  • 訓練前後のテストでは、スクリーンにシュートを打つ人のボールが手を離れる33 m秒前までの全身を映し、実際に体を動かしてボールの方向を予測させていました。
  • 実験の結果、知覚的訓練群のみ事前テストよりも事後テストの成績があがっていました(図1、図2)。また、知覚的訓練群のみ訓練前後でフェイントありよりもなしのときに正確な判断をしていました(図3)。




図1 フェイントなし条件における訓練条件とテスト時期別の正確性


図2 フェイントあり条件における訓練条件とテスト時期別の正確性


図3 知覚的訓練条件におけるシュート条件とテスト時期別の正確性

  • 以上の結果から、知覚的訓練により7 mスローを止める確率は高まるが、フェイントがある場合の効果はフェイントがない場合の効果よりもやや低いことが示されました。ただし、どちらも訓練後には大きく正確性が向上しているため、このような訓練が有効であることを主張しています。


2015/05/13

【研究紹介35】嘘つき、嘘つき、頭に火がつくぞ!:児童期の言語的な欺瞞におけるワーキング・メモリーの役割の検討(Journal of Experimental Child Psychology, 2015)

Abstract(ざっくり和訳)
本研究の目的は、児童期の言語的な欺瞞におけるワーキング・メモリーの役割を検討することである。この研究では、6歳から7歳の子どもに誘惑に抵抗するパラダイム実験を実施した。この実験では、子どもはカードを使用したクイズゲームを行い、通常の知識では解けない最後の問題でカードの裏に書いてある回答をこっそり見るチャンスが与えられていた。言語的、視空間的なワーキング・メモリーの両方を測定し、それぞれの影響を検討した。嘘をうまくつけなかった子どもよりも、嘘をうまくつけた子供は、言語的ワーキング・メモリー課題の処理と再生の両方の成績が良かった。しかしながら、嘘をうまくつけた子供とつけなかった子どもの視空間的なワーキング・メモリーの成績には差が見られなかった。これらの結果は、言語的なワーキング・メモリーが嘘をつく行為に含まれる複数の情報の処理と操作の役割を担っていることを示唆している。

●文献情報
Alloway, T. P., McCallum, F., Alloway, R. G., & Hoicka, E. (2015). Liar, liar, working memory on fire: Investigation the role of working memory in childhood verbal deception. Journal of Experimental Child Psychology, 137, pp.30-38.

以下、ざっくり内容紹介。

  • 子どもの嘘をつく能力と、ワーキング・メモリーの関連性について検討した研究です。意外ですが、嘘の研究の中でワーキング・メモリーとの関連性について検討した研究は少ないそうです。少ない中でも発達心理学の分野と脳科学の分野で研究されています。
  • 嘘をつくときの認知メカニズムについてワーキング・メモリーを含めてモデル化している研究もあります。ADCM(Activation-Decision-Construction-Model)といった情報処理モデルです。こちらの研究は認知心理学や虚偽検出研究でよく引用されています。個人的には単純で分かりやすく良いモデルだと思います。






  • これまでの先行研究ではワーキング・メモリー課題の成績と子供の嘘をつく能力に関連があるといった研究と、関連がないといった研究があり、知見が一致していませんでした。この研究では、先行研究で使用されていたワーキング・メモリー課題が、言語的ワーキング・メモリーを測定しているものと、視空間的ワーキング・メモリーを測定しているものであったことが原因だと考え、両方のワーキング・メモリー能力と嘘をつく能力の関係性を検討しています。著者たちは言語的ワーキング・メモリーと嘘をつく能力と関連するが、視空間的ワーキング・メモリーは関連しないと考えていました。
  • 課題は子どもの嘘の研究でよく用いられる誘惑に抵抗するパラダイムでした。有名なのは魅力的なおもちゃ課題です。実験室に子どもが魅力的に感じるおもちゃを置いておき、実験者が立ち去る前におもちゃを見ないように教示し、実験者が帰ってきた後におもちゃを見たかどうかを質問する課題です。下記の研究紹介でもこの課題が使用されています。






  • 今回の研究では、子どもに簡単なクイズを回答させています。クイズはカードに書かれてあり、4つの選択肢の中から選ぶ形式になっていました。カードの裏には、そのクイズの回答が書かれています。最初の2問は簡単に回答できますが、最後の3問目は絶対答えられない問題になっていました。実験者は3問目の問題を出した後に、いったん部屋から出て行きますが、そのときにカードの裏の回答を見ないように教示していきます。
  • 実験の結果、24.5%の子どもしかカードの裏の回答を盗み見ませんでした。また、盗み見る行為には言語的、視空間的ワーキング・メモリー能力に関連性が見られていません。と他の先行研究では約70%の子どもが盗み見ていたので、この少なさについて文化差の影響があるかもと考察していました。今回の課題は盗み見る行為がカンニングになってしまうので、割合が低下したのではと個人的に考えています。
  • ワーキング・メモリーとの関連ですが、著者達の仮説や先行研究のとおり、嘘をうまくつけない子どもよりも、嘘をうまくつける子どもの言語的なワーキング・メモリー能力は高くなっていました。しかし、視空間的ワーキング・メモリーには違いが見られませんでした。
  • このような結果から、言語的なワーキング・メモリーは嘘をつくときの情報処理に関連しており、嘘をつくかどうかを判断することには関連していないことを主張しています。
  • この論文のタイトルは“Liar, liar, working memory on fire”ですが、これは“Liar, liar, pants on fire”をもじったものだと思われます。後者は子どもが誰かから嘘を言われたときに“嘘つき!”といったような意味で使われるそうです。意訳すると“嘘つき、嘘つき、お尻に火がつくぞ”みたいな感じでしょうか。“嘘つきは泥棒のはじまり”と似たような感じで使用されているのかもしれません。


2015/05/08

2015年度 日本生理心理学会の嘘や欺瞞に関連するかも研究のタイトル・リスト

2015年5月23日から24日にかけて第33回日本生理心理学会が開催されます。こちらの学会発表で嘘や欺瞞に関連する(かも)研究のタイトル・リストを作成いたしました。詳細情報はHPをご確認ください。

情報を削除して欲しい場合にはdeception.research.team[at]gmail.com(@に要変換)、またはTwitterアカウント(D_research_team)までご連絡ください。すぐに削除いたします。

なお、隠匿情報検査は記憶の有無を判別する検査ですが、関連研究として紹介させていただいております。


嘘や欺瞞関連研究

ポスター発表(5月23日 14時50分~16時50分)

  • 隠匿情報検査における脈波指標の挙動
  • 隠匿情報検査における返答の効果―無返答、否定、復唱否定の比較―
  • 隠匿情報検査における呼気・呼気相の反応傾向の違いに関する検討
  • 実務ポリグラフ検査における弁別的反応の一貫性
  • 同比率による視覚・聴覚同時呈示法を用いたP300の虚偽検出における加算回数の検討
  • CITにおける中心・周辺記憶が生理指標に及ぼす影響
  • 隠匿情報検査時の自発性瞬目の初発潜時は隠匿の意図によって長くなるか?

ポスター発表(5月24日 13時00分~15時00分)

  • 欺き時における脳血流の増大は意図性と課題難易度どちらによるものか

2015/05/07

【Open Research】イヌネコの騙し行動の事例収集の結果

イヌやネコの騙し行動に関してTwitterを利用して事例の収集を試みました。試みの詳細はこちらのページをご覧ください。

拡散希望のタグをつけてツイートしたところ、なんと80人の方がリツイートしてくださいました。ご協力いただいた皆さまに改めて感謝いたします。ありがとうございました。

さて、今回の企画は「#イヌネコウソ」で、イヌやネコが嘘をついているかもと思った事例をツイートしてくださいといったものでした。その結果、収集できた事例は例に使用させていただいたものと、欺瞞研のアカウントでツイートしたものを合わせて4件でした。。。
ツイートならば簡単なので、皆つぶやいてくれるだろうといった中の人1号の甘い見積もりでした。

拡散はリツイート・ボタンをワン・クリックするだけですが、ハッシュ・タグを使った書き込みはそれ以上に負荷がかかる課題になっているのだなと、しみじみ感じたしだいです。また、イヌやネコを飼っている人たちの目に触れなかった可能性もあります。その点も反省しております。
現在、改めて事例を収集することを企画しています。企画がまとまり、事例が収集できしだい改めて告知いたします。

Twitterでご協力いただいた方に事例を掲載する許可をいただきましたので、以下にまとめさせていただきました。


Liu(@liuleonora)様の事例

【猫の事例】お客さま、お見送りいたします!!外に出ちゃだめって言われてるから出ません。お座りでじっとしています!!と主張して、何回かに1回は脱走しようとする、猫。
【犬の事例】飼い主に言われた事を守ろうとする犬は、何かするのは飼い主不在の時が基本な気がします。帰る頃には何事もなかったかのように、きちんと自分の居場所に。入ってはいけませんとしつけられてた仏間に、実は何回も入って絨毯にゴロゴロしてたのを数年は気づかれずにいたのはシバ犬雌

欺瞞研の事例

【犬の事例】普段は外で飼っていたわんこをときどき段ボールに入れて家の中にいれてあげました。「段ボールからでちゃダメ」としつけられていたのに,私がその場から離れると段ボールから出て走り回っていました。私が戻ると,慌てて段ボールに戻って「でてないよ」といった顔をしていました。
【犬の事例】 犬小屋の付近の目立たないところに穴を掘って、えさで出されたやわらかい魚の骨を隠していました。父親が見つけると、必死になってごまかそうとしたそうです。
また事例収集の際に例として利用させていただいた10周年げっ歯類(@toji2)様のキャベツと犬の例も興味深いです。こちらは試みのページをご覧ください。

事例の掲載にご快諾いただきましたLiu様に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

事例は少ないですが、イヌとネコの欺瞞行動は少し異なるかもしれません。こちらに関してもっと事例を集めてみたいと思います。