2014/08/11

【研究紹介10】印象操作(“嘘”)尺度は対人的な自己統制と関連があり、欺瞞とは関連していない(Journal of Personality, 2014)

Abstract(ざっくり和訳)
本研究では、社会的望ましさを測定するための印象操作尺度(「嘘尺度」であるバランス型社会的望ましさ反応尺度の下位尺度)の妥当性を検証し、この尺度が実際には自己統制に関する特性を測定していることを示した。また、バランス型社会的望ましさ反応尺度のもう一つの下位尺度である自己欺瞞尺度と比較を行い、この尺度が嘘尺度として妥当であることを示した。実験1(参加者99人)では、実際の自己と理想的な自己を想定して、これらの尺度に回答した。実際の自己と理想的な自己の評価には高い相関が見られる場合は、嘘尺度として妥当でない可能性がある。その結果、印象操作尺度にはある程度の相関が見られたが、自己欺瞞尺度には相関が見られなかった。実験2(参加者140人:70組)では、印象操作尺度と自己欺瞞尺度について自己と他者の評価が一致する程度について検討した。自己と他者の評価が一致していた場合は、測定された特性が行動として表出されている可能性がある。その結果、自己と他者の評価が一致していたのは印象操作尺度のみであり、印象操作尺度で測定された特性が実生活にも反映されていることが示された。実験3(参加者182人)では、印象操作尺度と自己欺瞞尺度の個人差を説明するために自己統制が重要であるかについて検討した。その結果、印象操作尺度と自己欺瞞尺度において自己統制が重要であることが示された。実験4(参加者190人:95組)では、他者の評価による自己統制が印象操作尺度と自己欺瞞尺度に一致する程度について検討した。その結果、他者の評価による自己統制は印象操作尺度のみと相関していた。以上の結果から、印象操作尺度は社会適応を志向した自己統制に関連する特性を測定しており、自己欺瞞尺度は壮大な自己を反映した欺瞞傾向を測定していることが示された。また、印象操作尺度で測定される特性は他者に伝わっているが、自己欺瞞尺度で測定する特性は他者に伝わっていないことからも、自己欺瞞尺度の嘘尺度としての妥当性が示唆された。

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●文献情報
Uziel, L. (2014). Impression management ('lie') scales are associated with interpersonally oriented self-control, not other-deception. Journal of Personality, 82(3), pp.200-212.