Abstract(ざっくり和訳)
“普通の”人の道徳的でない行動は、社会的・個人的に重要な課題を提起している。本稿では、道徳に非常に価値を置いている人の意図的な道徳的でない行動に関して急速に拡張している研究を構築し、促進するための自益的な正当化の役割に重点を置いた新しい枠組みを提示したい。人が意図的に道徳的でない違反を行う前後に生じる自益的な正当化は、自分の道徳的な側面に対する脅威を緩和している。この正当化により、道徳を感じつつも悪いことを行える。違反を行う前の正当化は、問題のある行動を申し訳のたつ行動に再定義することによって、自分の道徳的な側面に対して予期される脅威を軽減している。違反を行った後の正当化は、違反を調和するか、軽減する償いによって、自分の道徳的な側面に対して経験された脅威を緩和している。本稿では、悪いことをしつつ道徳を感じることを促す心理的なメカニズムに焦点を当て、道徳的でない行動の自益的な正当化の時系列的な次元に関する将来的な研究の方向性について示唆した。
●文献情報
Shalvi, S., Gino, F., Barkan, R., & Ayal, S. (2015). Self-serving justifications: Doing wrong and feeling moral. Current directions in Psychological Science, 24(2), pp.125-130.
以下、ざっくり内容紹介。
- これまでの研究では“普通の”人の道徳的でない行動があまり注目されていませんでしたが、近年はこの分野の研究が心理学、経済学等で盛んに行われています。この論文はこれまでに実施されてきた研究を簡単にレビューし、普通の人の道徳的でない行動を説明する重要な概念として“自益的な正当化(self-serving justification)”を提案しています。
- 普通の人の道徳的ない行動の研究は、その行動が意図的であったか、意図的でなかったかを分けて研究していますが、この論文では意図的なものを主に対象にしています。
- 自益的な正当化は“問題のある行動に理由を与え、非道徳性を低減する過程”と定義されています。また、自益的な正当化には道徳的でない行動をする“前”と“後”でメカニズムが異なることを仮定しています。
- 道徳的でない行動をする前の正当化に関わる要因としては、(1)状況の曖昧性、(2)自益的な利他性、(3)道徳のライセンスを挙げていました。
- 道徳的ない行動をした後の正当化に関わる要因としては、(1)洗浄、(2)罪の告白、(3)道徳的ない行動から距離をとるを挙げていました。
- これらの要因は全て非道徳的な行動の非道徳性を低減させることに寄与していることが先行研究で示されています。詳しい内容は本文をご参照ください。
- おもしろかったのが、(1)洗浄に関する研究です。自分が非道徳的でない行動をしたことを想起させたときに、洗浄用のティッシュで手をふくと罪悪感が低下したそうです。
- 最後に今後の研究の方向性として、(1)個人差、(2)現在と将来の志向性、(3)時系列的な正当化の必要性、(4)非道徳的な行動を起こさせないための介入法を挙げていました。特に(4)は非道徳的な行動をする前は介入しやすいが、行動をした後の介入について課題があることが示されていて興味深かったです。
これまで紹介してきた論文のリストは【別館】にありましたが、ブログ内で完結していた方がよいと考えなおし、「タイトル・雑誌名・年号」をまとめることにしました。以下、フォーラムのページ内のリンクも貼ってありますので、ぜひ興味あるかもと思ったページに飛んでみてください!
【別館】には文献の詳細情報を記したリストがあります。
- オウチョウは他の鳥の警戒声を鳴き真似してだます(Science, 2014)
- 幼児初期の嘘(Developmental Psychology, 2013)
- テストテロンを投与された男性は嘘をつかなくなる(PLoS One, 2012)
- 無意識や直感が嘘を見抜く能力を向上させる研究いくつか
- 嘘をつくときに視線をそらすといった知識が、子供が実際に嘘をつくときの視線行動に与える影響(Journal of Experimental Child Psychology, 2009)
- 意図的な嘘をつくときの状況要因とパーソナリティ要因(PLoS ONE, 2011)
- 疲れ果てると本当のことなんて言っていられない(Journal of Experimental Social Psychology, 2009)
- どんな人が正直者?どうして正直なの?(Biological Psychology, 2013)
- 社会的排斥への適応的反応:社会的拒絶は本当と嘘の笑顔の判別能力を改善する(Psychological Science, 2008)
- 印象操作(“嘘”)尺度は対人的な自己統制と関連があり、欺瞞とは関連していない(Journal of Personality, 2014)
- 君のことを知らないと嘘をつきたいけど、私の脳(楔前部)は協力してくれない(Scientific Reports, 2012)
- 皮膚温から無意識的な虚偽検出を測定する(Frontiers in Psychology, 2014)
- 2つの欺瞞:蟻に擬態したクモ(Peckhamima picata)は視覚的・化学的な手がかりを利用する捕食者の両方に捕まらない(PLoS One, 2013)
- 睡眠不足と欺瞞の自己制御モデルの構築:カフェインと社会的影響の役割(Journal of Applied Psychology, in press)
- 偽りの笑顔は嘘つきの検出を阻害する(Journal of Nonverbal Behavior, 2012)
- 左側の顔は信頼できない:信頼性と感情表出における半顔の非対称性(Brain and Cognition, 2014)
- 女性は見知らぬ男性の顔から浮気のしやすさを判断できる(Biology Letters, 2013)
- オキシトシンの投与は社会的嘘の検出を阻害する(Psychological Science, 2014)
- 小さな嘘つき:子どもの言語的な嘘の発達(Child Development Perspective, 2013)
- 午前中はたいていの人が善良である:時刻が非道徳的行動に与える影響(Psychological Science, 2013)
- 誠実になるためには時間(と正当化できない状況)が必要(Psychological Science,2012)
- オキシトシンを投与された男性は、集団のために嘘をつきやすくなる(Proceedings of the National Academy of Science, 2014)
- 医療現場でプラセボ処方が受容される、受容されない状況と理由:患者の立場からの質的研究(PLoS ONE, 2014)
- 嘘つきを見習う:大人の嘘行動が子どもの誠実性に与える影響(Developmantal Science, in press)
- 左胸に手を当てると誠実に見えるし、誠実になる(Cognitive Processing, 2014)
- 行為の悪さが重要?真実と嘘に対する子どもの初期の理解に行為の悪さが与える影響(Journal of Experimental Child Psychology, 2012)
- 女性には笑顔でコミュニケーションした方がよい:文化によらず性別は人の笑顔の誠実性の知覚を修飾する(International Journal of Psychology, in press)
- 本当の笑顔を示す手がかりは笑顔・人の特徴の評価に異なる影響を与える(Journal of Nonverbal Behavior, 2013)
- 表出者の意図が異なる「本当」の笑顔と「嘘」の笑顔の特徴をもつ表情に対する模倣(Journal of Nonverbal Behavior, 2014)
- 嘘をついた方が道徳的?他者を思いやる気持ちと誠実性が葛藤する状況における嘘行動(Journal of Experimental Social Psychology, 2014)
- 8~17歳を対象にした他者の誠実性の判断と過去の自身の誠実性に関わる行動の関連性(International Journal of Behavioral Development, in press)
- 他者の利益のために嘘をつく人を子どもは信頼する(Journal of Experimental Child Psychology, in press)
- アメリカと中国における子どもに養育者の言うことを聞かせるための嘘利用行動(International Journal of Psychology, 2013)
現在、欺瞞的コミュニケーション研究会では研究の一環としてイヌやネコの騙し(だまし)行動の事例を収集しています。
ご家族の一員であるイヌやネコの行動で
「あれ、この子、何かごまかそうとしていない?」
「この子、私のことをだまそうとしていない?」と思ったことはありませんか?
たとえば・・・
事例の収集方法は以下の3つです。
- このブログのコメント欄に記入する。
- 【鍵をかけていない方】Twitterでハッシュタグ「#イヌネコウソ」をつけて、事例をつぶやく。
- 【鍵をかけている方】Twitterで@D_research_teamに向けて、事例をつぶやく。
とりあえず事例の収集は、2015年3月31日まで続ける予定です。
集まった事例については、事例をつぶやいた方の許可を得てから、
研究フォーラムで公開させていただく予定です。
また、許可が得られた内容の全てについてオープン・データとして公開する予定です。
皆さまのご協力をお願いいたします。