2015/02/02

嘘や欺瞞行動に関する国際学会のお知らせ(Decepticon: International Conference on Deceptive Behavior)

寡聞にして知りませんでしたが、なんと嘘や欺瞞研究に特化した国際学会が開催されます!
その名も、Decepticon: International Conference on Deceptive Behavior”です。

詳しくはこちらのHPをご覧ください。

開催場所はイギリスのケンブリッジ大学です。
開催時期は2015年8月24日~26日です。

Oral, poster session ともに 300words の abst を登録し、査読が通れば発表できます。

締切日は現在のところ、以下の通りです。


  • 学会参加登録とアブスト投稿の開始(Opening registration and abstract submission)
    2014年12月19日から
  • 口頭とポスター発表の投稿締切(Submission deadline for abstracts of oral & poster presentations)
    2015年4月1日(エイプリル・フール!)まで
    2015年4月8日に延長されました!
  • アブスト投稿結果のお知らせ(Feedback on submissions) 
    2015年6月1日
  • 学会費早期割引終了(End early-bird rate conference fee) 
    2015年6月15日
  • 学会発表者の登録締め切り(Registration deadline for presenting authors)
    2015年8月1日まで
  • 学会開催(Conference dates)
    2015年8月24日から26日

また、学会のカバー領域は以下の通りです。

  • Psychology (e.g., forensic, social, cognitive, neuro, evolutionary, developmental, marketing/consumer) 
  • Behavioral economy (e.g., preventing and deterring deception, deception in companies)
  • Law (e.g., police interviewing, polygraph use, malingering, deception in court)
  • Computing (e.g., using technology to detect deceit, machine learning)
  • Security (e.g., fraud, cybercrime, border control, lying about intentions)
  • Communication (e.g., interactional dynamics, verbal and nonverbal cues to deceit) 
  • Anthropology (e.g. cultural differences in both the acceptability of deceit and the display of cues)
  • Philosophy (e.g., self-deception, what is and is not deception) 



Vrij先生やGranhag先生などの大御所、Hancock先生やVerschuere先生など新進気鋭の先生方のtalkも予定されているようです。

ぜひぜひ日本の嘘や欺瞞に関連する研究をしている先生方や学生の方は参加を検討してくださいませ。

2014/12/25

【研究紹介33】アメリカと中国における子どもに養育者の言うことを聞かせるための嘘利用行動(International Journal of Psychology, 2013)

Abstract(ざっくり和訳)
114人のアメリカの養育者と85人の中国の養育者を対象に、自分の言うことを聞かせるため自分の子どもに嘘を利用する行動を調査した。養育者のほとんど(アメリカは84%、中国は98%)が、自分の言うことを聞かせるために嘘を利用することを報告した。両国において、自分の子どもが一緒についてくることを拒否した場合に、本当は一人で置いておくつもりはないが、“置いて行ってしまうぞ!”というような嘘をよくついていた。嘘の利用行動には文化差も確認され、アメリカの養育者よりも中国の養育者は自分の言うことを聞かせるための嘘を利用し、この行為を容認していた。本当は上手くピアノを弾けていないのに“上手い、上手い!”といった子どもの肯定的感情を促進するための嘘や、“クリスマスイヴにサンタさんがプレゼントをくれるよ”といったような空想のキャラクターに関連した嘘の利用行動に関して文化差は見られなかった。本研究の結果は、社会文化的な価値や文化間に存在する躾に関連した課題の観点から議論された。

●文献情報
Heyman, G. D., Hsu, A. S., Fu, G., & Lee, K. (2013). Instrumental lying by parents in the Us and China. International Journal of Psychology, 48(6), pp.1176-1184.

以下、ざっくり内容紹介。

  • 養育者は子どもに嘘をついてはいけないと教育する一方で、自分の言うことを聞かせるために嘘を利用することがあります。


  • 本研究では、アメリカと中国の養育者の子どもに言うことを聞かせるための嘘利用行動に関して研究を行っていました。
  • 方法は非常に単純です。事前調査で両国の親が利用しやすいと考える4つのテーマの嘘のシナリオを両国の養育者に読んでもらい、そのような嘘を実際についたことがあるか、そのような嘘を利用することを容認するかについて評価してもらっています。また、自分の子どもがつく嘘を許容するかどうかについても調査しています。
  • 4つのテーマは、食事・移動・逸脱行為・お金に関する内容でした。詳細な内容は本文の表1にまとめられています。
  • その結果、養育者のほとんど(アメリカは84%、中国は98%)が4つのテーマに関する嘘のいずれか一つは利用したことがあることが報告されていました。
  • 両国において最も利用されやすいのは“移動”に関する嘘でした。これは自分の子どもが移動しようとするときについて来なかった場合、“一人で置いておくぞ!”といったような嘘です。次に利用されやすいのは“お金”に関する嘘でした。これは実際には買うつもりはないのに“そのおもちゃは後で買ってあげるからね”といったような嘘です。
  • 嘘の利用行動には文化差が見られ、アメリカよりも中国の養育者は自分の言うことを聞かせるための嘘を利用しており、利用すること自体も容認していました(図1、2)。ただし、図2を見てわかるように平均値は中央値以下であり、見られた差も小さいです。効果量は記載されていないので何とも言えませんが、そこまで大きな差ではないような気がします。

図1 国別の子どもに言うことを聞かせるための嘘の利用頻度
注)値が大きいほど利用頻度が高いことを示す。

図2 国別の子どもに言うことを聞かせるための嘘を利用することに対する容認度
注)値が大きいほど容認していることを示す。
  • また、中国よりもアメリカの養育者は空想上のキャラクターに関する嘘をつくことを容認していました(図3)。さらにアメリカよりも中国の養育者は自分の子どもが嘘をつくことを許容していませんでした(図4)。両国において、子どもの嘘に対する容認も中央値以下です。

図3 国別の空想上のキャラクターに関する嘘をつくことに対する容認度
注)値が大きいほど容認していることを示す。

図4 国別の自分の子どもが嘘をつくことに対する容認度
注)値が大きいほど容認していることを示す。



  • 以上の結果から、子どもに言うことを聞かせるために嘘を利用する行動は文化によらず発生しているが、嘘の種類によって利用頻度や容認の具合が異なることが示唆されたことを考察しています。この他、研究の限界や今後の課題についてかなり長く議論していますので、興味ある方はぜひ本文をご覧ください。


2014/12/12

【研究紹介32】他者の利益のために嘘をつく人を子どもは信頼する(Journal of Experimental Child Psychology, in press)

Abstract(ざっくり和訳)
本研究では、嘘をつく人の信頼性を判断するときに、嘘をついたときに得られる利益を子どもが考慮するかどうかについて検討した。2つの実験(参加者計214人)を行った結果、6から11歳の子どもは、相手の利益のために嘘をつく人を信頼し、自分の利益を得るための嘘をつく人は信頼していなかった。その一方で、利益を享受する対象に関わらず、真実を伝える人を信頼していた。相手の利益のために嘘をつく行為自体は道徳的に良いことではないと考えているにも関わらず、子どもはこのような人たちを信頼していた。これらの結果から、子どもは他者の信頼性の評価するときに、話し手の証言の真実性と利益の享受者の両方を考慮しており、行動が道徳的に受容できるかどうかは信頼性の評価の前提条件ではないことが示された。

●文献情報
Fu, G, Heyman, G. D., Chen, G., Liu, P., & Lee, K. (in press). Children trust people who lie to benefit others. Journal of Experimental Child Psychology.

以下、ざっくり内容紹介。

  • 他者から利用されたり、だまされたりしないように、その人が信頼できるかどうかを判断する能力の発達は非常に重要です。
  • 3歳くらいになると、子どもは他者の信頼性を評価するときに、相手が嘘をついたかどうかを判断基準の一つにするといった知見があります。


  • しかし、全ての嘘が信頼性を損ねるわけではなく、嘘の種類によって信頼性の評価は異なります。たとえば、6から7歳くらいになると、相手の気持ちを傷つけないためにつく嘘よりも、自分の過失に罰を避けるためにつく嘘は悪いものだと理解しています。


  • この研究では、①行為自体の良し悪し、②話し手の情報価(真実・嘘)と、③利益の享受対象(自分のため・相手のため)が、子どもの道徳性と信頼性の評価に与える影響を検討しています。
  • 実験はシナリオ法を用いています。上記①~③を操作したシナリオを作成して、シナリオの主人公について道徳性と信頼性の評価を行わしています。全て2水準なので、2×2×2の8シナリオです。イメージしづらいかもしれないのでシナリオの例を1つ訳しました。

シナリオの例①悪い行為・②嘘・③相手のため
ある日、LiliとHonghongは教室で遊んでいました。そのときにLiliはあやまって花瓶を割ってしまいました。教師が教室にやってきて、とても怒りました。教師は花瓶を割った人に罰を与えなければならないと言い、誰が割ったのかを二人に尋ねました。本当はLiliが花瓶を割ったのだけど、Honghongは自分が割ったと教師に言いました。

  • 実験1には124人の子どもが参加しています。①行為自体の良し悪しは参加者間要因、②話し手の情報価と③利益の享受対象は参加者内要因でした。子どもがシナリオの内容を理解しているかを確認した後に、シナリオの主人公の行為の道徳性を評価させています。そして、主人公の信頼性についても評価させていました。
  • 実験の結果、行為の良し悪しに関係なく、自分のためでも相手のためでも話し手が真実を伝えるときは道徳性が高く評価され、相手のために嘘をつくときは中程度に、自分のために嘘をつくときは低く評価されていました。
  • その一方で、信頼性の評価に関しては、自分のためでも相手のためでも話し手が真実を伝えるときと、相手のために嘘をつくときに高くなり、自分のために嘘をつくときは低くなっていました。年齢によって細かい差がありますが、そちらは本文をご参照ください。
  • したがって、相手のために嘘をつくことは道徳的に良い行為ではないといった理解があるにも関わらず、その人は信頼できると評価されていたことになります。
  • 実験2では実験1の結果を精査するために、相手のために嘘をつくことと、自分のために真実を話すことを比較していました。得られた結果は実験1と同様でした。
  • 総合考察では今回の実験で使用したシナリオの問題や、今回得られた結果の実務的な示唆がまとめられています。
  • 個人的な感想ですが、実験1の①悪い行為、②真実、③相手のためのシナリオが主人公の行った悪い行為を正直に述べているものを“相手のため”にしていることがひっかかります。他人のせいにしなかった点を“相手のため”と扱っていますが、これは操作的定義すぎるかなと思いました。